越の修武録 令和編

上地流空手道宗家直系春日山修武館 令和元年からの活動記録です。

道場開設10年を迎えて(平成17年5月会報掲載)

 春日山で上地流を始めたときはまったくゼロからのスタートでした。当初は十年後のことなど想像すらできませんでしたが、私なりに夢中で空手をしているうちにいつしか十年の節目を迎えるに至りました。
 当道場は地道な努力を根底にした道場であるべく心掛けてきました。いわゆる運動センスのいい者を探し出してきてスター選手を養成する道場ではなく、能力によらずその意欲によって努力を重ねる者が集う道場でありたかったからです。少しずつ‘能力によらずその意欲によって努力を重ねる練習生’が集まり、残り、10年の活動のなかから19名の有段者が育ちました。他流オープントーナメントで実績を挙げる選手も多数輩出できました。ビジョンがあって広めたわけではないのですが道場も春日山のみならず新潟市長岡市に広がり、平成14年度からは県内各道場の選手が競い合う独自の新潟大会も公開開催しています。どうやら新潟県にも上地流空手道が根付いたのではないでしょうか。これらの状況は私にとって身に過ぎる成果であり、支えてくださった皆様のご厚情に深く感謝し、練習生の努力に敬意を表します。
 10年かけて生まれた新潟の上地流空手道を、これからは広げることよりも育て伸ばすことを主眼に考えていこうと思います。特に有段者の上地流空手技法の質をより高め、稽古をリードできる二段・三段を育成することは最優先課題です。競技力も他流のトーナメントで通用するかというところにさらしながら、全体のレベルをより高めていきたいと思います。試行錯誤の結果、稽古カリキュラムが整備できたこと、宗家は言うに及ばず他団体の先生方からも厚誼を得、ご教示いただけていることは心強いかぎりです。これからも流行をあてにするのではなく、とにかく地道に自分たちの道を行きます。
 司馬遼太郎吉田松陰の言葉として「そもそも吾の塾を開きて客を待つは 一世の奇士を得てこれと交わりを締び、吾の頑鈍を磨かんとするにあり」と書いています。上地の門に集う者同士、互いに磨きあいながら己を向上させていきましょう。