越の修武録 令和編

上地流空手道宗家直系春日山修武館 令和元年からの活動記録です。

子供達に学んで欲しいこと(平成20年3月会報掲載)

木曜17:00、土曜14:00になると、春日山道場にたくさんの子供達が元気な挨拶と共に集まってきます。入門当初は泣きながらお家の方にしがみつく子もいますが、皆いつしか後ろを見ずに道場の入り口に入っていくようになります。
空手を習ってみようという子供達の動機、上地流を習わせてみようという保護者の皆さんの動機は様々だと思いますが、私はなにを教えようとしているのかを、ここに明示しておきます。
私は子供達に上地流空手道の修行を通して‘芸事を学ぶ姿勢’を教えます。
上地流には流祖完文が中国から持ち帰った鍛えの原理と、宗家三代に亘って整備された原則が受け継がれています。その上地流の原則は気儘な参加では身に付きません。姿勢を正し、気持ちを集中させ、教える通りに正しく練習してください。帯が進むにはその原則に則って、立ち方、肘の位置、指先の位置、目線、呼吸など細部にわたって正しくできていなければならず、好き勝手に突いて蹴っているだけでは上地流を習得したことになりません。後輩を指導する際、自分がその帯の頃に仕込まれた原則がいかに大切であるか,気付くことでしょう。
習うにあたっては練習相手に敬意を持って接し、挨拶をしなければ相手にして貰えません。挨拶をすることにより、礼だけではなく、今これから級組手をするんだ、今級組手が終わったんだといった節度も学んでください。
また、宗家が失ってはいけないという鍛えの原理は、子供達にも心の緊張を促し、意識の集中力を高めます。打って鍛える鍛錬は運動センスに関わらず己を強くします。ですが、その鍛えた体も鍛えの手を抜けばあっという間に衰えてしまいます。弛まない精進の大切さを身に染みて感じてください。
元々上地流の空手は治安の定まらないコミュニティーで生活する沖縄の人々が、自衛にせまられ修練した武芸であり、無頼の輩に目にものみせる壮絶な拳法でした。先人達は子供の習い事になるとは思ってもいなかったことでしょう。私も12年前に春日山に道場を開設した当時は子供達に上地流を教えることは想定していませんでした。ですが今、このように大勢の子供達が門に集う道場となりました。平成の新潟の子供達に応えるべく鍛えの工夫を加え、このような方針で臨みます。
 上地流の空手と真剣に向き合い、芸事を学ぶ姿勢を学んでください。その子が中学や高校で空手以外の部活を始めるとき、勉強するとき、成人して仕事を学ぶとき、きっと身に付いた上地流の修練の仕方(芸事を学ぶ姿勢)が役に立ちます。
 門に集う子供達が豊かな人生を歩んでくれることを願っています。